第二次世界大戦前夜の1937年、ドイツの巨大旅客飛行船ヒンデンブルグ号がアメリカのニュージャージー州レークハースト海軍航空基地で着陸寸前に爆発炎上した。地上作業員を含む36人が犠牲となり、飛行船の黄金時代に終止符を打つこととなったこの大惨事は、イギリスの豪華客船タイタニック号の沈没(1912年)、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発(1986年)とともに、20世紀に起きた世界的な大事故のひとつとして語り継がれている。しかし、その原因については諸説が飛び交い、いまだに特定されていない。
浮揚ガスとして、ヘリウムの代わりに燃えやすい水素ガスが充填されていたとはいえ、万全の安全策が施されていた飛行船がなぜ爆発炎上したのか?
まったくの偶発的な事故なのか、それとも何者かの陰謀によるものだったのか? そしてその爆発の裏側で、アメリカとドイツ、そしてヨーロッパ全体の運命を左右しかねない駆け引きが繰り広げられていたとしたら・・・・。 本作『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』は、ヒトラーの第三帝国が戦争へと突き進んでいた不穏な時代を背景に、“空のタイタニック号"とも言える豪華飛行船の最後のフライトを、リアル感溢れるヴィジュアルと共に緊迫感に満ちた歴史ミステリーとして描いた大作である。
出演は、主人公マーテンに映画・TVで活躍のドイツの若手注目株マクシミリアン・ジモニシェック。ジェニファーに『Lの世界』『ミュータントX』『CSI:科学捜査班』等人気TVシリーズに出演のローレン・リー・スミス。その両親に『フライトプラン』のグレタ・スカッキと『アメリカン・ヒストリーX』のステイシー・キーチのベテランコンビ。そして脇を固めるのはドイツの名優たち。ツェッペリン社の会長に『ドレスデン、運命の日』のハイナー・ラウターバッハ、社長に『わが教え子、ヒトラー』のウルリッヒ・ネーテン、乗客の芸人に『ローザ・ルクセンブルク』のハンネス・イェーニッケ、ユダヤ人一家の妻に『太陽に恋して』のクリスティアーネ・パウル、ドイツ総領事館員に『ゴーストライター』のロベルト・ゼーリガー、さらに『es[エス]』のユストゥス・フォン・ドホナーニ、ヴォータン・ヴィルケ・メーリング、アントワン・モノー・Jrも出演。監督は、2002年に長編デビューし、映画とTVを手がけているドイツの俊英フィリップ・カーデルバッハ。
世界中の人々が憧れたヒンデンブルグ号の雄姿は、フリードリヒスハーフェンのツェッペリン博物館に保存されている設計図を基に、一部にデジタル技術も採り入れて忠実に再現。爆発炎上後の崩壊シーンもこれまでにない映像で描かれ、ロバート・ワイズ監督のアメリカ映画『ヒンデンブルグ』(75)に挿入された記録映像に勝るとも劣らないリアリティで迫る。実物大で再現されたゴンドラは重さ5トンもあり、乗客と乗員を乗せて巨大クレーンで吊り上げられた。本物と同じく高さ6メートルの展望デッキや、客室、貨物室、バウハウス風の食堂なども再現された。また、ニューヨークのヴァンザント邸とフランクフルトのアメリカ領事館は、ニュルンベルク近郊のファーバーカステル館で撮影された。